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瀧の白糸像と出会う。(H23年9月12日)

瀧の白糸像9月に入り、さすがに朝晩の寝苦しい暑さは一段落したが、それでも日中の日差しは照りつけるように熱い。
そんな中、売り物件募集のチラシ配布に東山から並木町界隈を半日かけて歩いた。金沢のもっとも金沢らしいひがし茶屋街を彷徨い。梅の橋を渡り、並木町のマンション群を横目に、橋場町の古い町並みの散策をチラシ配布の傍ら、楽しんだ。
普段は車で通過することはあっても、街の風情を感じながら、歩くことはまずない。車は便利な乗り物で、目的を持った移動の道具としてはこの上なくありがたいものではあるが、外界から隔離された一つの部屋でもある。つまりは外のニュアンスを感じない乗り物なのである。
東山裏通り歩くことで、知ることは多い。暑い日の木陰の涼し。川のせせらぎの心地良いひびき。渡る風の清々しさ。どれも歩くことでしか感じられない季節のささやかな営みである。
東山から梅の橋を渡り、左に橋を下りると並木町に入る。ちょうどそこに「瀧の白糸像」に出くわす。小説の中で、悲しい最期を遂げた彼女が今もそこにいるのである。現在では滝の白糸という名称の方が世に知られ、泉鏡花の作品と瀧の白糸を混同し、記憶している人も多いと思うが、実際には泉鏡花の小説「義血侠血」に出てくる主人公の水芸人の名称であり、それを映画化した際のタイトルが「瀧の白糸」なのである。
橋場町方向から見る梅の橋あらすじは法曹をめざす欣也を、旅芸人の瀧の白糸(本名=水島友)が金銭的援助をするのだが、その金を奪われそうになり、犯してしまった殺人事件を、検事となったその青年が断罪し、死刑判決が下される。そして瀧の白糸は自殺し、後を追い欣也も自殺をするという悲しくも、切ない物語である。この二人が出会ったのが、浅野川にかかる天神橋であり、この像がここに建てられた所以でもある。
この像ののある並木町は現在、鉛筆のように細長く高いマンションが立ち並び、浅野川を挟んで反対側にある東山とは異なる景観を作り出している。鏡花の頃にはなかった今の金沢の景色のひとコマである。